第65回「段ボール工場、無人化へ」(板紙段ボール新聞R1年12月7日付)掲載より

昨年、経済産業省のレポート「2025年の崖」では、日本の遅滞しているデジタルトランスフォーメーション(DX)が進まなければ「2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と警告しています。これに危機感を抱き、すでに一部で無人化の試みが始まったスイスの段ボール工場へ潜入してきました。

  

人口856万の小国スイス。段ボール事業者数も日本より遙かに少ないものの、チョコレートなどの食品や医科向け医薬品における世界企業が存在するだけに、高品質な箱が生産されています。

訪問したスイス中部に位置する社員数600人の独立系企業は紙器段ボール、取説、ディスプレイを3つの事業の柱とし 、オフセット、フレキソ、デジタルを保有し商品の幅を広げています。見学したデジタル工場で美粧段ボールケース、ディスプレイの500個以下の極小ロットをインクジェットとデジタル加工機で生産、オペレーターが一人で稼働させていました。

工場長にデジタル印刷・紙工機を入れて良かった点について尋ねると、「柔軟な顧客ニーズへの対応、小ロットの受け入れ、短納期化、高い生産性、少ない消費電力が挙げられますが、とりわけスイスは人件費が世界一高い。このため、常に競争力を重視し生産性向上、省力化、省人化にチャレンジしている」とのことです。

印刷は完全無人化はまだでも、すでに加工では実現しており、残業分をエリトロン社のデジタル加工機(写真)で無人生産。夜間に3パレット(1パレット・高さ1100mm)の加工をこなします。

今頃はクリスマス商戦多忙な時期。社員さんが街に繰り出した後、黙々と灯りの消えた工場で加工をするのはデジタルロボットというわけです。SFで見たような世界が段ボール工場でも始まっているのですね。