第44回「繊維業もデジタル印刷?」(板紙段ボール新聞H30年3月7日付)掲載より

昨今のインターネットによる技術革新で産業構造が根底から覆される事象が毎日のように起きています。そんな中繊維業がデジタル印刷向けの製品を昨年開発したとのことで急遽オランダに飛びました。

マルチメディアで印刷業界も影響を多分に受けたその代表的な事例と言えますが、そのいっぽうネットで印刷物を発注する通販化は市場を伸ばしています。印刷紙器、段ボールにおいても同様のビジネスモデルが欧米では増えています。デジタル印刷は小ロットで印判不要、データの改変が簡単でスピーディなどが特徴として思い浮かびますが、他にはアナログ印刷との大きな違いは紙だけでなくいろいろな素材に鮮明な画像を印刷できることでしょう。こうしたなかデジタルオフセット機で印刷ができる特殊キャンバス生地が昨年登場しました。メーカーはオランダ東部のドイツ国境までたった3キロという小さな町ロッセルにあるファン・ヘーク織物社。創業150年で世界遺産となった富岡製糸工場と同様のレンガ作りの工場の中では今も機織り機が純白の縦糸と横糸を紡いでいます。布になると染色されカラフルなロールカーテン、豪華本の表紙などの用途に市場に出ていきます。糸の選別から徹底した品質管理で同社のキャンバスは紙のような均質な厚み、異物が一切ない仕上がり、そして精細な印刷を可能にした平滑な表面、こうした最高品質から布でありながら精度を求めるデジタル印刷機に対応できるようになりました。紙の代わりにキャンバス地に何を印刷し、どう使うのか素人の筆者にははてな?でしたが今までに無い画期的な価値を創ることができるのではないかとこの老舗のイノベーションに感動したのでありました。