第40回「デジタル印刷先進国」(板紙段ボール新聞H29年11月7日付)掲載より

昨今、技術革新のスピードから生活が大きく変わる一方、我々の産業についてはまだ ごく一部だけという印象です。しかしながら近年 欧米だけに留まらず アジアにおいても商業印刷でも 段ボールでもデジタル印刷機の普及に弾みがついていると耳にしています。このため その実情を探りたくデジタル印刷会社を多数顧客に持つという知人に会うために天津を訪れました。

5年ぶりの天津の街は一変し林立する超高層ビル、飛行場のような造りの駅からは新幹線が頻発、もはや浦島太郎になった気分でした。そもそもなぜ デジタルに積極的なのか尋ねると、従来のオフセットやフレキソ印刷方式の置き換えという発想ではなく、新たなビジネスチャンスを狙いたいからというものでした。幾分鈍化したとは言え経済成長が続く中国、従来の生産技術で何ら問題なく商業印刷や段ボール印刷も行われていますが、トレンドとしてプロダクトサイクルが短い、商品のバリエーションがあまりに豊富、極端な短納期、サービスの差別化の必要性など 従来の生産方式では対応できない仕事が目立つと言います。デジタル印刷機はそうした市場ニーズにマッチしているとしています。見せてもらったのは銀行のキャッシュカード 今やデザインも自由に好みで選べて、銀行に押し付けられたのを持つよりハッピーだと言ってました。中国人の欲求は 皆と同じものより、自分だけのものが欲しい、いわゆるパーソナライズができる印刷に心を奪われているようです。デジタルの成功の秘訣は?と尋ねると、創造力の大きさが左右するとのこと。従来の仕事をデジタルに置き換えてみる、だけでは高いものになってしまう。今までの不可能が可能になるのがデジタル技術。新しい価値を創造できるか否かにかかっているようです。思えば この20数年間 急発展を遂げた中国に比べ我が国は不況が長く変化が少なかったと言えるでしょう。 こうしたことから冒険をする勇気を無くしたかもしれません。そう思いながらそびえたつビル群の天津の夜空を仰いだのでありました。