第136回『ロボットが自立するとき』(板紙段ボール新聞R7年11月7日付)掲載より

先月『ロボットが同僚になるとき』をこのコラムで考えました。筆者は生成AIとかヒューマノイドロボット(つまり人型ロボット)に造詣があるわけでは無いのですが、向こう5年以内に製造現場で浸透すると言われているだけに、この業界に身を置く読者の皆さんと大いに考えを巡らせたいと思います。

商業誌「プレジデント」9月号の記事によれば、米国の半導体メーカーNVIDIA(エヌビディア)社の台湾人CEOジェン・スン・ファン氏は「 AIが情報空間から物理空間へ進出する時代」というビジョンを今年示したそうです。それによると、従来の生成AIは文章や画像を作る“デジタル知能”でしたが、“フィジカルAI”という概念は、ロボットや自律システムが知能を使い現実世界で活躍することだといいます。つまり、AIが人間の目・耳・手足を持ち、見る(認識)・考える(推論)・動く(実行)を一体的に行う段階に入ったという考え方だそうです。 先月のコラムではヒューマノイドロボットは“優秀な部下”? “同僚”?と指示を守る良き仲間と考えましたが、この記事をよく読んだうえでこれを段ボール工場の製箱ラインに導入すると、現在は有功社シトー貿易が販売する抜き不良、糊付け不良を検知しアラートを発する技術が、“フィジカルAI”では不良を検知し、自動で原因究明し補正する。さらに、熟練技術者の知識や発生事例から学習し再発防止を励行する。 また、現在はユーザーからの注文に従って社員さんが生産計画を作り必要な段取りを行い、製品を作るといった一連の流れも、ユーザー情報をもとにすべてAIが全工程をプログラミングし24時間生産し納期通りに完璧な製品を納品するというストーリーになると思います。多種多様な顧客ニーズ、そして少量生産、過不足なく短納期という日本の市場環境はアナログ生産よりデジタル生産、そして労働力が劇的に減少する社会では“フィジカルAI” が活躍するぴったりの土壌ではないのかと強く思うのであります。

写真は エヌビディア社のホームページよりフィジカルAIロボット