第134回『いつか来た道』(板紙段ボール新聞R7年9月7日付)掲載より

筆者が社会人になったのは遠い昔、1980年代。
当時は「猫も杓子も世界へ」という国際化時代の幕開けで、自動車、電機、食品、流通、銀行と、あらゆる産業が海外進出を目指していました。そのため、海外で活躍できる人材が求められ、就職はまさに売り手市場でした。

例えば、自動車や家電では、一流メーカーがひしめく西ヨーロッパ市場に、日本製品が一気に押し寄せました。冷蔵庫ひとつ取っても「価格の安さ」に加え、狭い日本の住宅事情から生まれた小型化・静音設計、豊富なカラーバリエーションなど、多くの付加価値がありました。極東の無名ブランドであっても、その優れた機能と品質が評価され、瞬く間に各家庭に普及。ヨーロッパの街には日本製品が溢れ、日本人が「黄禍」と恐れられた時代でもありました。まだ中国が“世界の工場”になる前のことです。

そして21世紀も四半世紀を過ぎた今、本紙でも賑わせているのは中国製の段ボール機械。つい最近まで「安かろう悪かろう」と評され、欧米や日本の複製品との批判も多かったものが、いまや省力化・自動化、フレキソとデジタルのハイブリッドなど、新技術や新たな価値を搭載し始めています。

従来の「機械を長く使う」という発想から、「技術革新に合わせて短期間で更新し、生産性を高め、付加価値をつけて収益を上げる」という思想への転換もみられます。その結果、段ボール発祥の地ヨーロッパでも、中国製マシンが着実に増えています。

かつてヨーロッパの街を日本車が席巻していた光景は、いまや様変わりしました。
これから日本の段ボール業界はどうなっていくのか。そして国内の名門機械メーカーはどんな価値を提案していくのか。筆者は不安よりも期待をもって、その行方を見守りたいと思います。
写真は Lanxin Technology社の自動運転フォークリフト