第145回 『欧州PPWRがもたらす「紙」が主役時代』(板紙段ボール新聞R8年8月7日付)掲載より

この5月、ドイツで開催された世界最大の包装展「Interpack 2026」を見学しました。
筆者の目的は明確で、国内でA式段ボールの価格消耗戦が続く中、業界を変えるヒントをどこに見出すか。そして、外国人観光客から「日本はプラスチックだらけ」と囁かれる現状に対して、環境先進国はどう動いているのか、という強い関心からです。
会場に足を踏み入れての第一印象は、欧州の環境規制強化に伴うパッケージング市場のパラダイムシフトでした。本紙今号の発行直後に発効する『欧州包装・包装廃棄物規則(PPWR)』に伴い、十年前の同展とは空気感が違う。もはや環境対応は“理念”ではなく、「法規制への完全準拠」のフェーズに入っており、市場は「プラスチックから紙への代替(ファイバー・ファースト)」へと一気に舵を切っています。欧州段ボール工業連盟(FEFCO)が示す「段ボール生産量五%成長」という予測は、高い確実性を持った現実であると思いました。 出展各社が掲げる「PPWR対応」をキーワードにした技術革新は加速しています。規制される「使い捨てプラスチック」の代替として、紙器や段ボールが完全に主役へ。 技術革新の事例を挙げると、第一に「さらなる軽量化と剛性の両立」。北欧のメッツア・ボード社やヒュルテ・ペーパー社は、独自の繊維制御やパルプ技術により、強度を保ったままパッケージ重量を20〜30%削減する原紙を提案していました。 第二に「包装の最小化と空間率制限(最大50%)」への対応です。中身に対して箱が大きすぎることを禁じる法規制に対し、シンテゴン社やヒューゴ・ベック社などは、流れる製品のサイズをセンサーで検知し、ミリ単位でジャストフィットする段ボール箱や紙包装を高速で自動成形するシステムを実演していました。 第三に、リサイクルを容易にする「モノマテリアル(単一素材)化」です。ヨスパック社は段ボールトレイと極薄フィルムを組み合わせ、廃棄時に消費者が一秒で綺麗に分離可能。 これら欧州の加速化は、日本の紙器・段ボール業界にとっても決して遠い国の話では無いでしょう。ユーザーが欧州へ輸出するとき、知らなかったでは済まされず、高度な分別・リサイクルインフラの優位性を活かした「ファイバー・ファースト」の潮流は、早晩に日本にも押し寄せて来るはずです。 この潮流こそが価格消耗戦を脱する大チャンスであり、今後、紙器・段ボールの生産量が飛躍的に伸びるというのが筆者の確信なのです。
写真は 100%漂白バージンパルプの軽量ライナーを使ったケース メッツアボード社ブースで(Interpack2026で)