第129回『白ライナを考える』(板紙段ボール新聞R7年4月7日付)  掲載より

国内の段ボール生産量が漸減しているのは本紙の報道のとおりで、各社の工場長さんに伺っても需要減少を憂いています。これは経営の問題ではなく、段ボールを要する産業の生産量、ひいては日本経済、消費人口の減少に直結しているため如何ともし難いことではあります。しかし、ふと考えました。段ボールは茶色だけでは無い、白もある。白ライナで新たな需要を掘り起こせないかと。

2020年に新型コロナウイルス感染症が爆発的に拡がった折、臨床検査技師さんの監修のもと、段ボール製PCR検査ブース『どこでも発熱外来』を当社が製品化した直後は、医療機関から「すぐ持って来て!」と急き立てられたものです。しかし、コロナは暫く続くとの認識に伴って「茶色の段ボールは美観を損なう」と改善を求められました。そのため白ライナに変更、さらに中しんも白にしたミルダンへと仕様を変えました。このように柔軟に仕様を変えられたことが奏功し、茶ライナから白ライナへの置き換え需要が起こりました。こうしてコロナが完全終息するまでおよそ4年にわたり命を守る段ボール製品として大いに活躍してくれました。

そのような過去を振り返りながら、かかりつけ医を訪ねたらちょうど、純白に山吹色で印刷された「医療廃棄物」専用箱 =写真= が運び出されてきました。

段ボール箱はA式、茶色で安いものと、多くの日本人は生活の中で固定観念を持っているかと思います。もちろん、それが段ボールの特徴であり、だからこそこれほどまでに普及したわけですが、使用するシーンに合わせて色彩を変えるだけでも、コモディティからスペシャリティ製品、付加価値がまだまだつけられると思った次第です。そして、灯台下暗しで、まずは産業に従事する我々が目線を変えた提案をすることで段ボールの可能性はまだまだ拡大できるのではないでしょうか。輸送だけじゃない、いわゆる“映える段ボール”で新たな需要喚起できないかと考える今日この頃です。