第95回「父の日自動販売機」(板紙段ボール新聞R4年6月7日付)掲載より

新型コロナの影響に加え、人口減社会に入った日本では、消費は今後も下がり続けることは避けられません。その中で生産財、消費財を作る、または販売する事業者が事業継続するためイノベーションは必須と、筆者も痛感しています。

最近、JR東日本の駅構内に大型の自動販売機のような什器を目にします。

そして、今は「父の日特集」と大書きされています。中を見ると、仙台の吟醸酒、東京近郊の駅弁アソートセット、鎌倉のビーフジャーキー、銀河鉄道999の缶ビールなどが一緒くたに詰まっているではないですか。

しかし、お金を入れるところもなく商品取り出し口もありません。その代わりにQRコードが付いていてスマホでかざし、ネット注文する仕組みです。これは画期的な発明と思いました。

なぜなら、「モノを売るから、コトを売る」即ち、商品はお酒、ビールではなく、〝父へのプレゼント〟であること。そして、缶ビールを銀河鉄道999にすることでお父さんにロマンを、駅弁をアソートセットにすることで旅行に行けないお父さんに旅をプレゼント?

通勤通学、外出で利用する駅構内に置くことで目に留まりやすい、ネット検索という手間が省略出来ている。消費者が比較検討するという隙(?)を与えない。そして、商品はいずれもJR東日本の線路がつながっている地方メーカー製、商品発掘はこの会社ならではの強みでしょう。

売れない時代に売る仕組みのプラットホームのひとつの進化系と理解して良いでしょう。鉄道会社だけにプラットホームがよくできています。おあとがよろしいようで。