第93回「高賃金国のチャレンジ」(板紙段ボール新聞R4年4月7日付)掲載より

「スイスの最低賃金は、世界の最高賃金」とチューリッヒ市郊外で日本旅館を経営する友人と話したことがあります。一昨年スイス・ジュネーブ州で可決された最低賃金は時給23スイス・フラン(約2660円)、東京都の最低賃金の2・5倍です。賃金が何年も上がらない日本、「成長と分配の好循環」果たして実現するのか…紙器段ボール業界の視点から考えてみました。

2018年のOECDのデータでは、国民1人あたりのGDPはスイス6・6万㌦(世界3位)、OECD平均4・4万㌦。一方の日本は4・2万㌦で18位です。労働生産性はスイス71㌦(世界6位)、OECD平均53㌦で、20位の日本は46㌦となります。

つまり、スイス人は我々よりも多くの付加価値を産み、生産性が高く、給料を得ているという羨ましく、目指したいモデルではないかと思います。

3年前、スイス・アールガウ州の外装段ボールから印刷紙器、ディスプレイを製造する中堅ボックスメーカーを訪ねました。段ボールには最新鋭の日本製FFG、紙器にはスイス製のハイエンド打抜機、どちらも最高速度で走っていました。

工場長にその生産性の高さを尋ねると、「我々は世界で一番〝高い〟労働力、これ自体で価格競争力が無い。だから、生産時間は出来るだけ短くする。高速生産が可能となる条件を整える。たとえば、ダウンタイムを減らすためにロット集約、完全外段取り、高速運転できるパッケージデザイン、面付、つなぎ、カスを減らすためのシングルカット、24時間生産、自動化の推進から将来の無人化へ…」と戦略を次々に披露して下さいました

新年度がスタートしました。これから私たちは、お客様の工場が目に見える成長、そして分配が実現できるお手伝いをしていきたいと思うのでありました。

写真はチューリッヒ市内のバス。3両連結して1人のドライバーが運ぶ乗客が日本より多い、生産性の高さの一例でしょう。