第144回 『「安すぎる段ボール」から脱却できるか』(板紙段ボール新聞R8年6月7日付)掲載より

〝新入社員さんに期待シリーズ〟第4回です。私は若い皆さんには、ぜひ日本の段ボール業界に残る悪しき商習慣を変えていただきたいと思っています。

 本紙をお読みになってもお感じかと思いますが、A式ケースが安く、そして値上げに多大な労力を費やしているのが日本の段ボール業界の現実です。先月、包装産業展Interpack2026で、欧州の段ボール業界の方々と歓談し、原紙価格やエネルギー、物流費が上昇すれば、それに応じて段ボール価格もしっかりと見直していることを確認しました。いわば「コストに連動して価格が決まる工業製品」です。一方、日本では高品質な製品を作り、小ロット・短納期配送を行い、細かな品質要求にも応えながら、そのコストを十分に価格転嫁できていません。
 さらに、「相見積もりによる価格競争」が常態化しています。これは行政がコンペではなく、入札によってほぼ価格のみで採用決定する習慣に起因するかもしれません。しかし欧米では、単純な値段だけでなく、提案力、サービス内容も含めて評価されるケースが少なくありません。若い世代にこの状況を変えて頂きたいのです。
 それと、必ずしも「段ボール箱=A式ケース」ではないことも付け加えたいと思います。A式ケースは最も生産効率が高く、その汎用性はメリットである一方、最も価格競争が激しい製品です。そこだけで勝負していては差別化が困難です。ユーザーが、ブランドが本当に求めているのは箱そのものではありません。包装作業を楽にしたい、輸送中の破損を減らしたい、店頭で目立たせたい、物流コストを下げたいなど、課題の解決です。
 組立時間を短縮する形状、商品の魅力を高める印刷・デザイン、物流効率を向上させる包装設計など、段ボールには多くの可能性があります。付加価値を創造し、お客様の課題を解決する提案ができれば、価格競争から脱却できます。
 そして最後にお願いしたいのは、「利益を取ることは悪ではない」ということ。利益は会社が成長するための必須アイテムで社員さんの給与を上げ、設備投資を行い、技術開発を進めるためにも適正な利益が必要です。
 このまま段ボールの安売りを続ければ、我々皆が不幸になっていきます。欧米であれ、アジアであれ、良いサービスには正当な対価を支払うという考え方が一般的です。日本の段ボール業界も、見合った利益を確保する時代に入っています。新入社員の皆さんには、「安く売る営業」ではなく、「価値を売る営業」を目指していただきたいと思います。変えよう業界!変えるのはあなたです!