事例:ゴム貼り作業のボトルネック解消における生産システム改善
Mauro Tomelleri, Serviform S.r.l., Caravaggio, BG, Italy

大抵の場合、現作業工程を注意深く見ていくことにより新生産システムの向上ないしは、生産性向上の為の新たなテクノロジーソリューションが明確になる。
普段の作業を観察することが、当然ながら可能な改善案を考えるには良い方法である。
抜型業界のような特殊な市場で、新たなテクノロジーや設備の導入は、ビジネスの見解を劇的に変えてきた。例えば、わずかな職人技が必要な仕事をCADシステム、レーザー、抜型刃処理機、自動折り曲げ機、ミーリング加工機、ウォータージェット機、ゴムカット機などを使うことで、さらに機械化できた。昨今の抜型製造方法は30年前とは劇的に違う。

過去の方法に唯一近いのがゴム貼り作業である。ウォータージェットやカッティング機などの自動カッティングシステムが大量に導入されているにも関わらず、小さなはね出しゴムの貼り作業は今だに一つ一つ人の手で行われているのだ。最近とは言ってもここ10年少し、高速打ち抜き機の導入により抜型メーカーに対し、抜型ツールの効果を劇的に向上させるようにもっと高速化にふさわしいゴムを要求するようになった。

基本的に、正確性を伴う均一で安定した抜型へのゴム配置は、目に見えるカット速度の向上にとって大きなカギとなる。
はね出し資材に加えてもう一つ考えておかなければいけないことは、抜型にどのように配置されているかである。数年前までは、手作業でやるしか方法はなかった。

複雑に入り込んで貼られたゴムを見れば分かるように、ゴム貼りは長年による技術と職人技が求められる仕事である。我々は、この作業に多くの労働力がさかれており、生産工程においてはボトルネックだと考えている。

次に、今日のジャストインタイム製造文化における抜型の想定納期を考えてみる。
抜型メーカー:「いつ、抜型をご入用でしょうか?」
顧客:「明日でお願いします」

打ち抜きは、パッケージ(段ボール)製造の最終工程であり、ゴム貼り作業は抜型製造の最終工程である。多くの場合、全員で作業にあたり、手が空いている人は必死になって配送会社の到着に間に合わせようとする。

我々の問いは、「どのようにしたら抜型製造上のボトルネックを取り除けるのか。答えは明らかに、ゴム貼り作業の効率をあげることだ」
「そして、我々はその方法を見つけた」
少し話を戻すと、当社の会社の一つである抜型メーカーFoppa Fustelle社(長年IADDに所属している)は、Bobst® certified diemakerの承認をイタリアで初めて受けており、段ボール製造者向けの完全なツールを専門としている。2017年後半、そこも含め当社の顧客に市場調査を行い、その調査と開発資源を人の手が介入せずともゴム貼りができるシステムの開発に充てた。

この夢のような全自動ゴム貼り機が、たゆまぬ努力と忍耐のおかげで現実となった。今まで、多額の資金と我々の技術革新をこの自動機の製作にあて、我々の数々のイノベーションを集結し、今ついに特許を取得した技術をこの業界にお披露目できる。

当社は複数の業界と技術を徹底的に調査し、擬人化された自動アームと XY軸にデザインされたテーブルを使用することでゴムを拾い、配置するという方法を見つけた。

我々はオープンソース・ソフトウェアを継続的に使用し、CADデザインによる全ての情報を最も効率的に使用している。

このシステムの元のアイデアは以下のようになっている。

・強力なユーザーインターフェースにより、標準ファイルを抜型製造用にデザインされた共通のCADソフトウェアから取り込むことができる。
・重大なデータベース構造が、ゴムの素材の特徴を収集、記憶しゴムの種類を見分けている。
・専用ソフトがすべての異なるゴムのカッティング経路データを回収し、アクチュエーターにより寸法が合うようにセクションごとにゴムピースを切り分けてくれる。
・強力なネスティングのソフトウェアが、小ピースのカッティングファイルを再デザインし、よりカット工程でゴムの残りカスの無駄を省いている。
・ゴム貼りをする抜型と、すでにカットされたゴムシートをセットする作業台
(ゴムは、異なる種類の色、硬度、密度、厚みのものでも可)
・ロボットのアームが、かなりの高精度で適切なゴムを設置場所から抜き取り、抜型上の正確な位置に配置する。
・特別に開発されたアクチュエーターが、特定のカットされたゴムを選び、抜型上に配置、PSAテープがしっかりと抜型に貼りつくように圧をかける。
・正確に素早く、配置を特定するこの装置は、常にアームと全てのゴムの正確な位置情報のチェックとフィードバックを行っている。

簡単でしょう?
当初から我々は、アームが最大107㎝までの抜型フォーマットには理想的だが145㎝の抜型、160㎝、さらに大きいと最大2100㎝のものには適さないと気づいていたので、代替えの技術的解決策を考えた。

2019年11月には最初のプロトタイプが完成し、最終テストの為に我々のデモエリアに配置した。後に自社の抜型メーカーの作業場にも2020年2月に配置した。我々の計画では2020年にデュッセルドルフで開催されるdrupaでお披露目予定だった。

しかし、ご存知ののとおりコロナ感染が流行し、2020年3月、パンデミックにあたりこの機会のお披露目は延期となった。

これらの困難にぶち当たったが我々は屈せず、この新しいシステムを自社の抜型メーカーで稼働し始めた。我々は、当初からアームの動きの経路、ソフトウェアを継続的に改善することで、必要な作業時間を徐々に短縮し、機械速度と生産性を向上できることは認識していた。

そろそろ、機械の名前を考えようかと思っていた時、我々のベネルクス市場のパートナーであるMirko Van Nunen氏が提案をしてくれ、採用した。彼は、我々の工場を訪れ、システムが動くのを見て「ロボットがゴム貼りを行っている、これはラボットだ!」天才的なネーミングセンスで我々はその通り名付けた。小さなラボット(アームが一つのもの)は今、「ラボット1070」と名付けられている。

©International Association of Diecutting and Diemaking.

一方、我々は、大きい抜型にはロボットアームの代わりに、もっと生産性高めるため、より効果的なXY軸デザインのテーブルを使うことを決めた。そして我々はさらに別の市場調査プロジェクトに取り掛かり、大きい抜型に合うサイズのテーブルデザインを採用した。新しい構造でも、同じ特許を取得したアクチュエーター(位置決めヘッド)とさらに高速化したXY軸駆動の位置決めカメラを採用することにした。

パンデミックの間、我々はまさしく会社の中に閉じ込められてしまったわけだが、この時間を新しい作業台の開発に費やした。イタリア北部にあるMade in Box社という大判の段ボール型を扱う抜型メーカーの密接な協力で2021年7月に我々は初のラボット2100を設置した。

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上記の会社でも、課題は作業時間を短縮し、システムが処理できるゴムの最大サイズだった。

我々は常に新しいソリューションの開発と製造する全機械の性能向上の為に尽力している。最高の結果を出すために、1年以上来る日も来る日も継続的なテストが抜型メーカの製造プロセスで行われてきた。

2021年12月に我々は、新たにまたラボット2100を当社の抜型メーカーFoppa Fustelle社に導入した。(扱っている大多数の抜型がB倍サイズの為)

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そして2022年1月、我々はラボット2100をオーストリアのBieling & Petsche Stanzformen GmbHに設置した。

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ラボット2100を使用してみた彼らの感想は「ラボットのソフトウェアと既存のシステムを接続するのはとても簡単だった。設置後すぐに使い始め、短時間で最初の仕事を終えることができた。また効果的なサポート体制により当初抱いていた疑問は即解消され、ラボットは完璧なタイミングで生産を開始できた」

「ラボットは当社の生産を充実化させ、我々のワークフローにも完璧に合っている。テスト期間中でも、ルボットは見事に1直中に12枚の抜型を製造した。初期のエラー率は3%。即座にソフトウェアを調整した後は、あり得ないようなゴムの配置がされる可能性はわずか1%以下であった」

ラボットは、もっと効率的なネスティングをゴムの原板に施すことができるので、初期段階でも14%もゴムの残りカスを削減することができる。正確な跳ね出しゴムのポジショニングも抜型の品質に大きな影響を与える。

インターフェイスは、とても簡単に操作できるので、オペレーターへのトレーニングも短期間で完結する。そして、ラボットのメンテナンスもとてもシンプルで新しい仕事のセットも短いプロセスで行うことができる。

我々は、ラボットがゴム貼りをする作業員にとって完璧なサポートになると確信している。

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試作品の製作を開始した段階から今日にわたるまで、我々は、持続的な発展を遂げるために努力してきた。そして、沢山の試行錯誤がAlberto Rossini氏 と Zivota Milic氏によってなされた。

パンデミックの期間中、ソーシャルディスタンスを保ち、直接的な接触を避ける必要があったが、研究開発を継続し、商品を世に出せるものにするために機械について数え切れないほどのオンラインミーティングを重ねた。我々は、複数のカメラを用いて世界中から顧客を集め、デモンストレーションとミーティングを行ったりもした。

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そしてあらゆる新製品や新技術と同様に、企業は知的財産を保護する必要がある。当社は完全なシステムに対して複数の特許を申請しており、すでにイタリアの特許 102019000020260 を取得している。現在は、欧州コミュニティ、米国、中国、日本、韓国の特許取得待ちである。

日々、ラボットの生産の強みを感じることで、我々はさらにゴム貼り作業のボトルネックを削減できていると実感できる。これは、当社の社員と初期顧客が伝えてくれた利点だ。

・かなりの労働力の削減ができる
・ゴムの残りカスの削減
・抜型全面へのゴム貼りの均一な品質(打抜機の速度アップ)
・ゴム貼り作業に高いスキルを要さない(劇的なトレーニング時間削減)
・高速で正確な作業時間を予測できる、カッティングファイル生成後数秒で高速で正確な作業時間を予測できる
・ゴムをカットする必要がないので作業時間短縮になる
・特別なゴムの細片をかなり削減できる(波の細片など)
・すでに使用されている機械を含め、広範囲のカッティングマシンの使用が可能
・異なる種類のゴムを使用できる(糊付き前提)

ラボットは、抜型製造業界で活躍する準備ができており、当社は次の発展への準備ができている。

・複数の抜型の作業エリアの開発(フォーマットコンビネーション)
・ゴム貼り作業の完全無人化を目指した努力を続けている
・生産データ通信の強化(industry4.0)
・ロータリーダイも、この自動化レベルに到達する可能性の模索

数年前、自動曲げ加工、ニッキング、ブローチング、穴あけ加工とカット刃・筋刃の加工を自動で行うなど夢だろうと多くの人に言われたが、今現実となっている!完全に自動化された抜型へのゴム貼りは、次の夢でそれも現実となるだろう。

 


編集者メモ:IADDとその雑誌「The Cutting Edge」は、新しい開発と業界の革新について知っていただくことに尽力しています。このケーススタディは、ビジネス上の問題を調査し、代替ソリューションを検討し、裏付けとなる証拠を使用して最も効果的なソリューションを提案する例です。この情報は読者の参考のために提供されています。ここで表明された見解や意見は、必ずしも IADD の見解や意見を表明または反映するものではなく、また、IADD による製品、プロセス、サービス、またはその製造者や提供者の推奨を構成または暗示するものでもありません。

当インタビューは、IADDがMauro Tomelleri氏を取材したものを許可を得て引用しています。

The IADD is an international trade association serving diecutters, diemakers and industry suppliers worldwide. IADD provides conferences, educational and training programs, a monthly magazine, online resource library of 750+ technical articles, industry experts to answer technical questions, publications, recommended specifications, videos and more. IADD also presents Odyssey Expo, a bi-annual trade show and innovative concept in technical training featuring a hands-on Techshop where training programs come alive in an actual working diemaking and diecutting facility inside the exhibit area. Visit www.iadd.org or call 1-815-455-7519 for more information about IADD.